- 最小侵襲手術(MIS)*に特化した最先端の人工関節置換術(膝、股関節)およびリハビリテーションを提供するセンターを目指す。
- テーラーメイド人工関節手術(TJA)*のコンセプトにのっとり、患者様一人一人に適した手術を提供し、効果を最大限に引き出すとともにリスクを最小限に抑える。
- 人工関節手術の件数にこだわるのではなく、患者様一人一人に対してリスクマネージメントを徹底し(感染、静脈血栓塞栓症etc)、患者様が安心して受けられるような医療を提供する。また、地域の開業医の先生方が安心して紹介できるような最終医療機関となることを目指す。
- バイオクリーンルームを兼ね備えた当センターでは、より安全かつ質の高い医療を提供することが可能で、人工関節手術だけでなく脊椎外科や外傷に関しても地域医療へ最大限貢献していく。

- 最小侵襲人工関節手術のメリットを最大限に引き出せるような組織作りを目指す。特にMIS専門の医療スタッフ(医師、理学療法士、看護師)をラーニングセンター(Zimmer Inc)で育成し、国内でも先駆的なMIS専門チームを作成する。
- レジデントの教育や学会活動なども積極的に行い、鎌ヶ谷病院人工関節センターとしてのデータを国内外に発進していく。
- 人工関節手術の認識はまだまだ低く、医療講演などを通して、地域の啓蒙活動を行う。
最小侵襲手術(Minimally invasive surgery: MIS)による人工関節置換術は、皮膚、関節包、筋肉への切開をできるだけ最小限にとどめて人工関節の手術を行う方法で数年前から米国で試みられました。使用する人工関節部品は従来のものと変わりませんが、(一部のメーカーで、改良されています)この技術によって術後の痛みは劇的に軽くなり、リハビリの早期開始、早期退院、そして早期社会復帰が可能となりました。以前は(また今でもそうですが)、手術には痛みを伴うのが当たり前で、大きく切ったことで患者さんが、より痛い思いをしなくてはならないことになっても、手術成績を重んじるのが、我々整形外科医の間で一般的でした。しかし、もし、ダメージを最小限度として同じ成績の手術ができ、なおかつ痛みもより少なくなればそれに勝ることはありません。
近年、このようなMISによる人工関節置換術のニーズは、高まるばかりで、2004年の米国整形外科学会(AAOS)での報告によるとMISによる人工股関節置換術(THA)は、全体の7割に達しているとのことでした。またインターネット(Yahoo, Googleなど)でMISを検索すると膨大な件数がヒットされるようになり、今や全世界的に普及されつつあります。現在、米国、日本での人工関節手術件数はそれぞれ年間50万件、10万件に達するともいわれ、かなり数の患者さんが人工関節の手術を受けていることがうかがわれます。日本では現在、MISは全人工関節件数のおよそ3割を占めると考えられますが、今後さらに増えていくことが予想されます。
これまでのわれわれの臨床経験から得られたMIS法と従来法との相違(TKAについて:図1)およびMIS-人工関節置換術の長所と短所(TKA & THA:図2)をまとめてみました。施設によって多少の相違はありますが、基本的には手術後の痛みが少なくてリハビリがスムーズで社会復帰が早いというコンセンサスは変わりません。但し、出血量や関節の動く角度には差がでないこと、術後一定期間を経過すると従来法との間には差はなくなるということも分かってきました。しかし、人工関節の手術年齢が若くなるにしたがって‘傷が小さい’というのは特に女性にとって大きなメリットであることには異論はありません。MIS-THAにおいては、実際、下着で傷が完全に隠れるということで大変喜ばれています。


さらにごく最近のわれわれの研究では、MIS-QS※やMIS-subvastus (大腿四頭筋にまったく傷をつけない方法)が、もっとも術後の筋肉のダメージが少ないということがわかりました。手術後翌日の血液検査で筋肉が破壊されたときに出現するCPKやミオグロビンというタンパク濃度がこの2つの方法でもっとも低いからです。
しかし、いいことばかりではありません。当然このような手術手技を、行うことができるようになるためには、それ相応の経験と確かな腕が必要です。また患者さんもいろいろですから、すべての人がMISで手術を受けることができるわけでもありません。術前の関節の変形が強い場合はMISが適用できない場合もあります。小さい傷で、手術は済んだとしても、中に入った人工関節が変な格好で入ってしまったらどうなるでしょう。現在の人工関節は、50年以上の歴史があり、改善に改善を繰り返しており、的確な手術ができれば、15年以上の耐用年数があると思われますが、変な格好で人工関節入ってしまったら、成績は当然悪くなり、患者さんの満足度も低くなるでしょう。MISにこだわったために、かえって手術後の成績が悪くなってしまうようなことは絶対に避けなければなりません。
当院では、人工股関節、膝関節ともにMISの技術に精通したスタッフが対応いたします。当初は、変形の軽い患者さんのみに限らせていただきましたが、現在ではさらなる手術機械の改良と医師スタッフの技術の向上もあり、約80%の患者様に10cm以下の傷で手術を行っております。MISの普及によって、人工関節置換術は、より多くの、そしてより若い患者さんが安心して受けられる手術になりつつあります。
手術の筋肉へのダメージを最小限度とし、早期退院を実現したMIS QS(大腿四頭筋温存型手術)は、専門研修(※キャドバー(献体)を用いた海外での手術実習を含む)を受けた医師のみが実施可能な手術です。現在国内でMIS QSを50例以上経験した施設はごく限られ7-8箇所程度です。
個人差はありますが、手術後2〜3日からの歩行訓練開始が可能です。
これまでの人工関節置換術は、手術および術後の治療はすべて同一のプロトコールのもとに行っていました。しかし実際は、大腿骨および脛骨の形状、関節変形の程度、術後合併症のリスク(金属アレルギー、血栓症、感染など)、身体能力(筋力、歩行能力)など手術前のコンディションは、患者ごとに異なっています。
近年、手術手技、インプラントの素材、術前術後のリスク対策が進歩したことにより、患者一人一人の特性やリスクに合わせて、手術内容、インプラント、リハビリメニューおよび手術前後の管理方法を細やかに設定することが可能になりました。患者個々に適した人工関節置換術を行うことで、手術成績の向上、入院期間の短縮、早期の社会復帰が可能となり、医療費の削減につながると考えられます。
二木 康夫






