前立腺肥大症について
前立腺は男性にのみ備わる器官で、精液を構成する前立腺液を分泌して生殖機能の一部を支えています。大きさは栗やクルミ程で、解説イラストをご覧頂ければわかる通り、恥骨の直腸の間、胱直下に存在します。膀胱に溜まった尿は、前立腺の中心部を通って外尿道口から排出されます。
この前立腺の内側(内腺)が何らかの影響で肥大することを「前立腺肥大症」といい、55歳以上の日本人男性の約2割がこの病気にかかると言われています。
前立腺肥大症になると次のような症状が見られるようになります。
前立腺肥大症の症状
前立腺肥大症になると、前立腺の中を通る尿道が圧迫されたり、塞がってしまったりすることで、次のような症状が現れる場合があります。
思い当たる方は泌尿器科を受診しましょう。
①残尿感
排尿後も尿が出きっていないような、残っているような感じがする。
②頻尿
平均的な排尿の回数は昼間は4~5回、夜間は2回前後ですが、その倍以上の回数トイレに行くような状態。
③尿途絶
排尿時に尿が途切れる。
④切迫症状
我慢できない尿意や排尿を我慢できず漏れる事がある。
⑤尿の勢いの低下
尿の勢いが弱くなる。
⑥排尿困難
排尿に時間がかかる・中々出てこない等、うまく排尿できない状態。
前立腺肥大症の検査
前立腺肥大症が疑われる場合、次の検査を行います。
①自覚症状の評価
国際前立腺症状スコア(IPSS)とQOLスコアというチェックリストと、問診で自覚症状を評価します。
②尿検査・採血検査/尿流量測定
採尿、採血で血尿や感染の有無、そして血液中にある前立腺特異抗原(Prostate Specific Antigen)を調べるPSA検査を行います。健康な方のPSAはおおよそ2ng/mL以下ですが、加齢にともなう前立腺の肥大や炎症により増えることがあり、4ng/mL以下が標準値とされています。
また、患者さんによってはトイレ型の検査機器に排尿して、尿の勢いや量、時間を検査します。
③直腸内診
肛門から指を入れて前立腺を触診します。この検査では前立腺の大きさや硬さなどを調べます。
前立腺肥大症の治療
前立腺肥大症と診断された場合、患者さまの状態に合わせて次のような治療を行います。実際に治療を受ける際に不安や疑問がある場合は遠慮なく主治医にご相談下さい。
①薬物療法
排尿障害を改善する「α1ブロッカー」、肥大した前立腺を小さくする「ホルモン剤」、切迫症状(我慢できない尿意)や過活動膀胱の改善を図る「抗コリン剤」をはじめ、植物製剤や漢方などを状態に応じて使い分けます。
②手術療法
電気メス備えた内視鏡を尿道から前立腺まで挿入し、モニターに映し出される前立腺を診ながら、大きくなった前立腺を電気メスで削る経尿道的前立腺切除術(TUR-P)という手術を行います。この手術は前立腺肥大症の手術として一般的なもので、多くの医療機関で使われています。
当院では生理食塩水潅流経尿道的前立腺切除術(せいりしょくえんすいかんりゅうけいにょうどうてきぜんりつせんせつじょじゅつ/バイポーラTUR-P)という、従来のTUR-Pよりも出血などが少ない手術で前立腺肥大症の手術を行っています。